Vision 2019.05.21

“ダッシュし続けた先に生きた証が生まれる”アルペンスキーヤー、湯淺直樹選手の情熱

勇気と決意に満ちた滑りとともに、世界最高峰のステージで活躍し続けるアルペンスキーヤーの湯淺直樹氏とアルファ ロメオが、強烈な個性に惹かれ合う形でパートナーシップを締結。すでにステルヴィオをドライブしている湯淺選手に、たぎる情熱の源泉をたずねた。

「日本一のステルヴィオ体験者という自負を持っています」

「この3カ月間で6,000㎞を越えました!」今シーズンの営業を終えたばかりの野沢温泉スキー場に『Alfa Romeo Stelvio(アルファ ロメオ ステルヴィオ)』。朝の陽射しを照り返す白銀のゲレンデに置かれた真っ赤なアルファ ロメオは、誰の目にもまぶしく映った。だが、昨年12月から共に雪山を駆け巡ってきた存在に注ぐ湯淺直樹氏の眼差しは、その輝きを惜しまず受け入れる愛しさに満ちたものだった。

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「ヨーロッパ遠征ではあえていろんな車種を乗り比べるほど、クルマが大好きです。ただ、アルファ ロメオだけは乗る機会がありませんでした。というのは、雪のある場所に向かうので4WDがマストだったからです。そこにアルファ ロメオ初のSUV4WDが登場して、“これは!”と期待していたところにサポートのお話を頂き、マジで泣きました」
子供のようと言っては失礼だが、クルマ好きの愛車自慢は得てしてとめどなき饒舌の体になる。

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イタリアとの不思議な縁を感じますね。20歳の2003年、文武両道に秀でたアルペンスキーヤーを称えるマテオ・バウムガルデン賞をいただいたのはイタリアですし、五輪で入賞を果たしたのも2006年のトリノでした。2012-2013シーズンのワールドカップで3位表彰台に立てたのもイタリアの大会。歴史的建造物を眺めると妙に懐かしさを覚えるので、もしかしたら前世はあの国で暮らしていたのかもしれない(笑)」
3カ月で6,000㎞超という濃密な時間で感じたステルヴィオのドライビングフィールを聞いてみた。
「SUVとは思えないほどハンドリングが軽快。回頭性の高さに惚れ惚れします。スキーにも似たところがあるのですが、意のままに向きを変えられると、実際の重量に関係なく重さを感じないものなんですね。ステルヴィオはそこが素晴らしい。いずれにせよ、市街地や高速道路、雪の峠道まであらゆるコンディションを短期間で走っていますから、今のところ日本一のステルヴィオ体験者という自負を持っています」

いつか必ずスキーで世界一になる!

“アルペンスキーヤー湯淺直樹”を語るとき、ほぼ必ず“復活”や“不屈”という単語が添えられる。なぜなら、この春で36歳になる現役選手としては最年長クラスのキャリアの中で、幾多の怪我と手術を経験してきたからだ。それでも彼は今もスタート地点に立っている事実がこの物語の核になるわけだが、この人が感じるトラブルのレベルは常人に推し量れるものではないようだ。

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「9歳になるとき、母親の勧めで地元札幌のスキー少年団に入りました。それがたまたまレース主体のチームだったので、いきなり早く滑ったら脛骨と腓骨を折ってしまいました。けれど治ったらすぐに滑りたいと思ったのは、誰かと競う楽しさに目覚めてしまったからです。それと同じ時期に、テレビで見たアルベルト・トンバに強烈に憧れました」
アルベルト・トンバは、冬季五輪で3つの金メダル、ワールドカップで50勝を挙げた伝説的アルペンスキーヤー。これも奇遇か、イタリア出身の選手だ。
「それで、僕もいつかスキーで世界一になると決めたのです」

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スキー部がなかった中学校で陸上部に入り走り高跳びを始めた。すると14歳で全国ランク3位になり、高校のインターハイで優勝するほどの成績を収めた。その一方、スキーではなかなか結果が出せなかった。
「ヘタクソと言われ続けましたね。あまりに成績が伸びなかったので、中学2年でスキーメーカーの契約を外されました。しかし用具のサポートなしで続けることはできず、他のメーカーを探していたとき、ある人に言われたんです。“走り高跳びのバネを生かせば将来が開ける”と。そこで、アルペンスキーで何をすればいいかがわかりました。雪上で誰よりも早く動けばいいのだと。これが転機でした。中学では北海道で15位程度の選手が、高校1年で全国2番手までになりましたから」

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そこから破竹の勢いが始まる、と書きたいところだが、19歳で椎間板ヘルニアを患ってしまう。日本人アルペンスキーヤーとして半世紀ぶりの五輪入賞を果たした22歳のシーズンは、膝のケガに際し“血を吐くまで痛み止めを飲み続けて”臨んだという。さらにワールドカップで3位に入った2012-2013シーズンに至っては、かつてのヘルニアが“果てしなく悪化して、まともに歩けない状態”だったそうだ。

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「誰よりも深く膝が入る。それが自分の骨格や筋力を生かしたスタイルですが、1回のターンで体に5G、スラローム1本で平均60回ともなると、どうしたって膝に負担がかかる。だから僕の滑りは諸刃の剣なんでしょうね。後に一から滑り方の見直しをしましたが、僕は自分に備わった武器で戦うしかない。それに怪我をしても、3日くらい休んだらイケるんじゃないかと思っちゃう。そしてレース当日は、勝つこと以外は考えない。そう、スキーを始めた頃に父親に宣言したんです。いつか必ず世界一になると。そうしたらお前はバカかと言われて。ハッと気づきました。これは人前で口にしちゃいけない希望なんだと。あきらめないのが僕のモチベーション。子供の頃から今日まで何一つ変わっていません」

どんなに否定されても、なりたいものになっていい

幾度目かの膝の手術を受けた2018年。スキーヤー人生で初の試みに挑んだ。20年以上使ってきた国産ブランドからオーストリア製『ATOMIC』へのマテリアル変更だ。

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「おそらく、世界一になるため僕に残された時間は4年がマックスです。かつてないほど厳しい挑戦になるのが目に見えていたので、すべてを出し尽くす体制をつくりたかった。そこで決断したのが、これまでやったことがなかったマテリアルチェンジ。世界一のブランドのスキーを履きたかった。多くの人は“今さら?”と驚くかもしれませんが、これでナンバーワンになったらカッコいいでしょ」
この人はどこまで行っても不敵なのである。

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「ATOMICを履いて驚いたのは、自分ではいい滑りじゃないと感じてもタイムが出てしまったところです。それも初めての経験でした」
『ATOMIC』を使って出場した2018年末の『全日本スキー選手権男子アルペンスキースラローム』で優勝。確かに、有言実行の不敵さほど怖いものはない。

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さらにもう一つ。ここ数年で意識が変わったというのは、次世代育成への思いだ。自身の様々な経験を伝えることで誰かの夢を後押しできるのではないかと気付いたという。それが具現化した一例が、話を聞いた野沢温泉スキー場で4月1日(月)~2日(火)に開催された、『ATOMIC 湯淺直樹スペシャルジュニアキャンプスキー』だ。
「子供たちに向けて正しく力強い言葉で話せるよう、大学院の体育学部に通ってしっかり勉強しました。大変でした。毎日片頭痛になっちゃって(笑)」
湯淺選手の真面目さを感じさせるエピソードでもある。

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「どんなに否定されても、なりたいものになっていい。それを伝えたいです。特に現代は情報過多で、先を予見するときにマイナスな因子ばかりが目についてしまう。けれどそれこそがまやかし。脇目も振らず全力でダッシュし続けた先に人間として生きた証が生まれるんだと、そう信じて疑わない背中を押す力になれたらと思います」
湯淺直樹というアルペンスキーヤーのキャリアを語るには、現実的な部分で“復活”や“不屈”は外せないのだろう。しかしこの人は、どこかネガティブな匂いがする単語より、9歳から抱き続けてきた純粋無垢な一途さを表現したほうがふさわしい。
ステルヴィオに虜にさせる引力があるのと等しく、そのきらめきを目で追ってしまう光のようなまぶしい力が彼には備わっているのだから。

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PROFILE

湯淺直樹

アルペンスキー回転競技で、ワールドカップのトップ10を過去10回以上経験。3位に入賞した実績を持つ。日本選手の最年長でありながら、その滑りは攻撃的でキレの良い強気のアタックが持ち味。2018/2019シーズンは膝の怪我からの手術を経てからの参戦。2018年12月の全日本選手権回転競技では、他のライバルたちを圧倒して優勝。今後日本代表として復活が期待されている。

湯淺直樹氏ブログ:https://ameblo.jp/naoki-yuasa1321/

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▼今回、取材にご協力いただいた『Restaurant&Bar 火祭り』

INFORMATION
Restaurant&Bar 火祭り

住所 長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷9288
TEL 0269-85-1230

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Text:田村 十七男
Photos:大石 隼土

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