Vision 2018.08.16

常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

世田谷区を拠点に、樹齢200年〜300年の国産天然木・無垢材の一枚板の販売を行うベンチャー企業『WONDERWOOD』。常識破りの発想で事業を展開する同社の若き社長、坂口祐貴氏の[IQ]と[EQ]に迫った。

樹齢100年を超える巨木から切り出された“一枚板”。自然のままの表情を持つ、一枚板の木目や形状にはひとつとして同じものはない。坂口祐貴氏はその一枚板に魅せられ、プロダクトメーカー『WONDERWOOD』を起業。国産天然木・無垢材を生かした一枚板のテーブルは決して安価ではないが、若い世代を中心に売り上げを伸ばしている。材木に関する知識ゼロから『WONDERWOOD』を立ち上げた坂口氏の銘木に対する情熱やブランドにかける想い、そして、ブランディングへの深い造詣とは──?

20180712_qetic-alfa-taichiro-0074 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

大量生産/大量消費時代を生きてきたミレニアル世代

東京にある『WONDERWOOD(ワンダーウッド)』のショールーム。一枚板のテーブルには、坂口氏愛用のアナログカメラが置かれていた。今はもう存在しない国、西ドイツ製のレンズがついている。

「時間軸を感じるモノが好きなんです。100年以上の歴史を持つアルファ ロメオさんと同じように、僕らのブランド『WONDERWOOD』も“時間”というものをとても大切にしています」

20180712_qetic-alfa-taichiro-0005 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

坂口氏は1988年生まれ。いわゆるミレニアル世代だ。

「大量生産のど真ん中の、本物がどんどんなくなっていく時代に育ちました。木といえば間伐材ばかりで、木だと思ったら木目調のシールだった、なんてことも多々あります(笑)」

圧倒的な存在感を持つ一枚板との出会い

そんな坂口氏が起業に至ったのは、鳥取のカフェで一枚板を使ったテーブルに出会ったのがきっかけだ。東京の大学を卒業後、大手外資系企業に就職。営業を担当し、神経をすり減らす多忙な日々を送る。心身ともに疲れ果て、2014年に鳥取にUターンした坂口氏は、その一枚板のテーブルの、「圧倒的な存在感に、これまでの価値観を覆され」、銘木を取り扱う仕事をしたいと考える。そんな思いから立ち上げたのが、“木と人の在り方を考える”をコンセプトとしたプロダクトメーカー『WONDERWOOD』だ。『WONDERWOOD』では、現在、樹齢200〜300年の天然国産木の一枚板を中心に販売を行なっている。

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「長く愛されてきたモノには意味があると思っています。僕もそんな風な、長く使え、長く愛されるものを作っていきたいと考えたんです。よく『実家は材木屋さんですか。何代目?』などと聞かれますが、父は公務員で母は主婦。木とはまったく縁のない、普通の家庭に育ちました(笑)」

起業当時、坂口氏の木に関する知識は「ほとんどゼロ」。それでも迷いはなかった。

常識に囚われず、本当に求められているものを提供する

「木の種類がこれほどたくさんあることも知りませんでした(笑)。今も勉強中ですが、逆に何も知らなくて良かったと思うこともけっこうあるんですよ」

木の世界では、割れや穴は、その価値を下げるマイナス要素となる。しかし、『WONDERWOOD』では、「それも木が育った過程で得たかけがえのない個性」と、あえて割れや穴を生かす。また、テーブルなど一枚板を使った家具の仕上げはウレタンで固めるのが一般的だが、『WONDERWOOD』はそれをしないという。

kusunoki01_02 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

「木は切っても生きていますから、ウレタン塗料で固めないと動いてしまうんです。でも、呼吸をしているものが動くのは自然なこと。欧米ではそうやって動く木をメンテナンスし、何年も使い続けています。ショールームにご来店いただいたお客様には、最初に『うちの一枚板は動きますよ』と伝えています。そう伝えると帰ってしまう方もいらっしゃるかと思ったのですが、大抵のお客様は『いいですね、そういうものが欲しかったんです』とおっしゃいます。本当にお客様が求めているものを提供していきたいと思っています」

20180712_qetic-alfa-taichiro-0055 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

また、坂口氏は一枚板の値段のつけ方の不透明さにも疑問を抱いている。たとえば、木の値段は、玉杢や縞杢などの木目の出方、質によって左右されるそうだ。玉杢というのは、板材の表面に現れる丸い模様のこと。すべての樹木にあるわけではなく、老木に出やすい傾向があり、これが木の業界では珍重されている。

「玉杢の数や出方によって値段が決まったり、しかもそれが言い値だったりするんです。ただ、それは人間が勝手に決めた価値の指標にすぎません。感性の領域なのでしょうが、知識のない僕には意味がよくわかりません。いえ、知識をつけたところで理解できないような気もします(笑)。『WONDERWOOD』では、一枚板を定価で販売しているんです。木の種類と大きさで、誰でもある程度の価格が分かるようになっています。」

常識破りのスタイルに注目が集まるが、その根底にあるのは、“正統”な木材への理解、そしてリスペクトだ。たとえば、現在日本に数人しかいないといわれる木挽職人を顧問に迎え、彼の膨大な知識と経験に基づく商品開発を行っている。実際、国の重要文化財などの補修に使われる木曽檜を使い、寿司屋のカウンターを手がけた経験もある。あえて型を外し、自らのフィロソフィーを貫く──、それが彼らのスタイルだ。

20180712_qetic-alfa-taichiro-0011 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

ローンを組んででも買いたい一枚板

『WONDERWOOD』が扱っている一枚板は小さなもので10万円台から。テーブルの平均価格は50〜60万円で、樹齢が1,000年を超えるとさらに高額となる。決して安価な買い物ではないが、『WONDERWOOD』の一枚板はローンを組むこともでき、坂口氏と同世代の20〜30代の人がローンで購入するケースも少なくない。

「結婚され、マイホームを購入するタイミングでお求めになる方が多くいらっしゃいます。あふれるほどの情報やモノのなかで生きてきた、僕たちミレニアル世代は、高額でも本当に価値のあるモノを手に入れたいという思いが強いのかもしれませんね。一枚板は樹齢と同じ年数使えるといわれていて、次の世代に受け継ぐこともできます。本当にいいモノは長く使用でき、結局は金銭的な負担は少ないです。愛着もわいてきます」

20180712_qetic-alfa-taichiro-0087 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

外資系メーカーで営業を担当したキャリアは、一枚板テーブルを新たな層に展開していくブランディングにも生かされている。たとえばイベントの開催場所は、ブランドにふさわしい場所にこだわる。感度の高いお客さんが多く集まる、代官山蔦屋書店のギャラリーで一枚板を展示。無垢材を組む技術にこだわった、樫の木のテーブルは、銀座三越のイベントで発表した。また、今年の4月には、イタリア・ミラノで開催される世界最大級のデザインの祭典「ミラノ・デザインウィーク2018」に初出展を果たしている。

IMG_9325-3 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い「ミラノデザインウィーク2018」出展の様子

坂口氏は続ける。
「ホームページに、あえて最小限の情報しか掲載していないのも、ブランディングの手法のひとつなんです」

樹齢ほど長く続く企業を目指して

「ウェブサイトはありますが、一枚板はネットからは購入できないようにしているんですよ。ショールームに来ていただいて、お客様と話をして販売したいんです。ヒアリングさせていただき、そのお客様にもっとも合うものを提案させていただきたいと思っています。おこがましいかもしれませんが、一枚板を売ること以上に、お客様の人生に関わりたいんです。過去、現在、未来の時間軸は僕たちのブランドにとって大切な要素。もちろん木も売りたいですけれど(笑)、ブランド作りは長期的なスパンで行なっていこうと考えています」

23634065_548370782185987_522889403_o 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い最近では一般販売のみならず、オフィステーブルや飲食店・ホテルなどの企業からのオーダーも増えているそう。

ブランドのロゴは、『WONDERWOOD』の2つの“W”を組み合わせたもの。“山”を感じさせるデザインには、背景の自然までを考えられるブランドでありたいという思いを込めた。昨年には、「家族の中心にあるものを作りたい」というテーマのもと、イチョウで作った贈り物に最適なまな板を開発。有名店シェフなどにも好評を博し、海外での販売も決まっている。

20180712_qetic-alfa-taichiro-0099 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

20180712_qetic-alfa-taichiro-0114 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

「一枚板を使ったテーブルは、僕らの表現方法のひとつ。愛着はありますが、これだけにこだわっているわけではありません。木をベースに、人々が日々のストレスから解放されたり、そこからコミュニケーションが生まれたりするような、ビジネスを展開していきたいと思っています。そして、取り扱っている木の年齢と同じくらい続く会社にしていくことが目標です。既存のルールにこだわらず、どんどん仕掛けていきますよ」

時間さえ許せば、坂口氏は、何時間でも「未来」を語ってくれるだろう。彼の全身から、“やりたいこと”があふれ出している、そんな印象を抱いた。『WONDERWOOD』の挑戦に終わりはない。知識[IQ]に裏付けされたブランディングのもと、生涯を共に過ごせるような感性[EQ]あふれるアイテムを展開する『WONDERWOOD』、その果てしない未来を見守りたい。

20180712_qetic-alfa-taichiro-0041 常識に囚われず、本当に求められているものを。木に魅せられた社長・坂口祐貴が一枚板に込める想い

INFORMATION
『WONDERWOOD』東京ショールーム

住所 東京都世田谷区祖師谷6-33-14
TEL 03-6869-8220
営業時間 10:00〜17:00(要予約)
定休日 木曜、金曜
URL http://wonderwood.jp/

 
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Text:長谷川 あや
Photos:大石 隼土

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